【最新版】視能訓練士とは?就き方から平均年収・仕事内容まで余すことなく伝えます
視能訓練士は、眼科などで行う眼の検査や視機能の向上を目的とした訓練などを担う医療技術者です。視能訓練士になるために国家資格が必要であり、就職する病院の形態によって仕事内容や年収なども異なります。視能訓練士は近年、知名度が徐々に高まっている職業ですが、具体的なイメージがつかない方も多いのではないでしょうか。今回は、視能訓練士の就き方や平均年収、仕事内容を具体的に紹介します。
目次
視能訓練士と眼科医の違い
検査分野
訓練分野
健康診断分野
ロービジョンケア分野
国家資格試験に合格する必要がある
国家試験の受験資格を得るためには?
視能訓練士国家試験の概要
視能訓練士の勤務先
視能訓練士の雇用形態
視能訓練士の平均年収
視能訓練士と看護師の比較
眼科クリニックに勤務する視能訓練士のケース
大学病院に勤務する視能訓練士のケース
正確性と几帳面さ
根気強く続ける力
コミュニケーション能力
自分に合った勤務先を選びやすい
ニーズが高く転職しやすい
勤務先によっては残業や夜勤がない
キャリアアップを目指せる
女性が働きやすい
視能訓練士とは?
視能訓練士とは、視機能を回復するため矯正や訓練、それに伴う検査などを行う目の専門技術者です。視能訓練士は、視能訓練士国家試験に合格しなければなりません。
●視能訓練士と眼科医の違い
視能訓練士は眼科で活躍する医療技術者ですが、眼科医とは異なります。眼科医は、患者さまの診察や治療、外科手術などを行う一方、視能訓練士は眼科医の診療サポートや検査・矯正訓練の業務を行うため、役割や業務内容に違いがあります。眼の診察は適切な検査結果から判断する必要があるため、検査を行う視能訓練士は重要な責任のある仕事です。
また眼科医1人に対し視能訓練士は2〜3人が必要といわれていますが、現状では眼科医よりも視能訓練士の人数が少ないため、リソースの面からも必要とされています。
視能訓練士の業務内容
視能訓練士の具体的な業務内容は、大きく以下の4つに分類できます。
- 検査分野
- 訓練分野
- 健康診断分野
- ロービジョンケア分野
①検査分野
視機能を測定するためのさまざまな検査を行います。眼科医が検査結果から適切に診察、治療を行えるようサポートするのが視能訓練士の重要な任務です。
視機能(視覚機能)とは眼から入った情報を脳で処理し、その情報をもとに身体の機能を動かす一連の流れのことをいいます。視力の強弱だけではなく、複数の検査方法を用いて患者さまの視機能を測定する必要があります。
【視機能検査の一例】
*視力検査
一般的に「C」マーク(Landolt環)などを使い、どれくらい見えているかを測定する検査です。
*眼圧検査
機械から空気を出し直接網膜に当て、眼の硬さを測定する検査です。緑内障や網膜剥離などを発見でき、薬の治療効果をみる指標にもなります。
*視野検査
上下左右の見える範囲を測定し、視野が狭くなったり欠けたりしていないかを調べる検査です。
*屈折検査
眼の屈折度を測り、近視・遠視・乱視に該当していないかを調べます。*
*眼底検査
点眼薬で眼の瞳孔を開いてから行う検査です。緑内障や糖尿病などさまざまな疾患を発見するのに役立ちます。
*色覚検査
正常に色が見えているかを検査します。警察官や自衛官、飛行機などの操縦といった、業務上に信号の識別が必要となる職業でも必要な検査です。
視機能検査は一般的な検査から特殊な検査までさまざまあり、視能訓練士は診断や手術に必要となるデータを医師に提供しサポートします。
②訓練分野
視覚が発達する年齢は限られているため、視能矯正は子どもを対象にしています。とくに幼少期の目の代表的な疾患である斜視や弱視の原因を取り除き、訓練を行って改善を図ります。
斜視は両目の視線が同じ目標に向かず片方の目でしか見ていない状態のことで、弱視は片方だけよく見えて片方が見えない状態のことをいいます。
視力は幼少期に急速に発達しており、成長が止まると機能を育てることが難しくなります。そのため疾患を早期に発見し、すぐに矯正や訓練を行う必要があります。
③健康診断分野
視能訓練士は病院だけでなく学校や職場、保健センターなどの集団検診で視機能検査を担当します。
【主な集団健診】
- 3歳児健診
- 就学時健診
- 定期健診
大人を対象とした視機能検査では検査データからわかる疾患を発見し、早期の治療と改善を目的に行われます。子どもを対象とした視機能検査は、子どもの発達に影響する斜視や弱視などの早期発見と改善を目的に行われます。
④ロービジョンケア分野
ロービジョンケアとは、視覚の疾患や外傷などにより生活に支障がある人に対してサポートすることをいいます。視能訓練士は視覚・視野の補助具の使用訓練や、歩行・自律訓練などを行い生活しやすいようサポートします。そのため学校や職場での様子などもヒアリングし、最適な視覚補助具の選定と使用のアドバイスなどを行います。
また、身体障害者手帳や障害年金の申請などのアドバイスも行い、ロービジョン者を多方面から支援します。
視能訓練士になるには
視能訓練士になるために必要な資格試験や知識・技術を学ぶための機関について解説します。
●国家資格試験に合格する必要がある
視能訓練士はその他の医療専門職と同じく国家資格保有者であるため、国家資格に合格しなければなりません。また、国家資格試験を受けるために指定の大学や専門学校などで学ぶ必要があります。
●国家試験の受験資格を得るためには?
国家試験の受験資格を得るためには、主に3つのケースがあります。
①視能訓練士養成専門学校(3年以上)を卒業
高校卒業後は視能訓練士を養成する専門学校へと進み、3年間必要な知識と技術を学びます。視能訓練士を目指す最短ルートです。
②視能訓練士養成課程のある大学(4年制)を卒業
視能訓練士養成課程のある大学で、必要な知識や技能を修得した人は受験資格があります。
③大学・短大を卒業+視能訓練士養成校(1年以上)を卒業する
一般の大学や短大などに通っている場合は2年以上修業し、下記の指定科目を修了した場合は視能訓練士養成専門学校に入り直し1年間修業すれば、受験資格を得られます。
【指定科目】
必修科目:外国語、心理学、保健体育、生物学、物理学、数学、統計学
選択科目:教育学、倫理学、精神衛生、社会福祉、保育のうち2科目
別の職業を目指していたけれど、将来の目標が変わったという場合のルートです。
●視能訓練士国家試験の概要
国家試験 | 年に1回 |
試験時間と問題数 | 午前75問(2時間)・午後75問(2時間)、計150問(4時間) |
合格基準 | 約60%以上 |
合格率 | 約89%(2023年実施) |
2023年実施の合格率は90%を下回ったものの、過去数年の合格率は90%を超えており、比較的合格率の高い国家試験です。学校でしっかりと学べば、合格を狙える国家資格です。
視能訓練士として働く勤務条件
視能訓練士として働く場合の主な勤務先や雇用形態、平均年収について紹介します。
●視能訓練士の勤務先
高齢化が進み、目の疾患を抱える人が増えている背景もあり、視能訓練士は多くの需要があるため就職先には困らないでしょう。視能訓練士の主な勤務先は下記です。
- 眼科(大学病院・総合病院・眼科クリニックなど)
- 大学・専門学校などの教育機関、研究機関
- その他(医療系企業・リハビリ施設・保健所など)
眼科(大学病院・総合病院・眼科クリニックなど)
視能訓練士は資格取得後、9割近くが医療機関の眼科に勤務しています。病院によって規模や特徴は異なり、総合病院の場合は外科や内科などその他の診療科と連携することもあり、幅広い症例を経験できます。眼科クリニックはレーシック治療や小児専門などに特化したクリニックも多いため、その分野で専門性を高められます。
また病院やクリニックなどで専門職として勤務する方が多いですが、学校や会社で行われる集団健診を担当することもあります。
大学・専門学校などの教育機関、研究機関
視能訓練士を育てる養成所や、眼科医療に関する専門的な研究に携わる人もいます。視能訓練士養成所などに勤務するには、医療機関で視能訓練士として勤めてから転職というステップアップが一般的であり教員免許が必要なケースもあります。
その他
医療系の企業に勤める方やリハビリ施設、保健所で活躍する視能訓練士もいます。
●視能訓練士の雇用形態
視能訓練士は、70%以上の方が正規職員として勤務しています。その他の非正規職員は、パートやアルバイト、契約社員として勤務しており、扶養家族の限度内で働きたいなど家庭の都合にも合わせて働ける環境です。
●視能訓練士の平均年収
視能訓練士の年収は360〜400万円ほどが相場であり、平均年収はおよそ約380万円です。ただし、正規雇用に絞ると平均年収は約420万円です。
年収は勤務先や経験年数によって異なる
視能訓練士の平均年収は、雇用形態や勤務する地域、病院や診療所によっても異なります。
勤務先別での平均年収は私立大学病院がもっとも高く、以降は公立大学病院、公立医療機関、診療所の順に並びます。
また経験年数によっても異なり、初任給は月収20万円台とほかの職業とあまり変わりません。しかし専門的な知識や技能を求められる職業であるため、経験値があがれば年収も上がっていきます。
パートの場合の平均時給
視能訓練士は、パートなどの非正規雇用としても多く採用される職業です。パートタイマーの場合、平均時給は1,800円〜が見込めます。視能訓練士は平日のみで夜勤や残業がないため、家庭と両立しながらの働きやすさがあり、安定した収入が得られる職業といえます。
●視能訓練士と看護師の比較
同じ医療系の職種である看護師は、認知度が高く仕事のイメージもつきやすいため、視能訓練士と看護師を比較してみましょう。
看護師の場合は日祝の勤務や夜勤もありますが、視能訓練士の場合は基本的に日祝が休みで夜勤もありません。転職のしやすさについても上述しましたが、求人倍率は看護師よりも視能訓練士のほうが多い傾向にあります。
看護師は患者さまの処置も行うため注射など血を見る機会もありますが、視能訓練士の業務内容では血を見る機会はありません。「看護師を目指しているけれど合っていないかも」と悩んでいる方は、同じ医療系である視能訓練士の働き方のほうが合っている可能性もあります。
視能訓練士のお仕事スケジュール一例
視能訓練士の具体的な仕事内容について、「眼科クリニック」と「大学病院」で働く場合を例にして紹介します。
●眼科クリニックに勤務する視能訓練士のケース
一般的な眼科クリニックでのスケジュール例を紹介します。
【朝出勤~午前診療の準備】
クリニックの開業前から始業がスタートし、検査機械の立ち上げなど診療の準備を行います。クリニックによっても異なりますが、検査内容は多岐にわたるため検査機器の管理や操作だけでも時間がかかります。
【午前の診療スタート】
医師の指示のもと、来院した患者さまの検査を行います。クリニックによって来院する患者数は異なり、1日数十人から数百人と来院する忙しいクリニックもあります。患者さまのカルテや病状を見ながら、待たせないように効率よくスムーズに進めていきます。
【昼休み】
昼休みに検査が重なることもありますが、スタッフ同士で交代して休憩をとります。
【午後診療の準備】
機械のチェックや午後の診療に向けて準備を行います。
【午後の診療スタート】
午後は学校を終えた子どもたちの来院が多くなります。検査業務を行いながら、斜視や弱視の視能訓練などの対応も行います。
【1日の診療終了】
医師の診察のあとに検査を行うケースもあるため、視能訓練士は最後の患者さまの診察が終わるまで待機します。受付終了の間際に来院する患者さまがいると退勤時間が伸びる場合もありますが、診療が終われば基本的に残業は発生しません。
●大学病院に勤務する視能訓練士のケース
大学病院も基本的にクリニックと同じように午前と午後の診察にあわせて、検査機器の準備や管理、患者さまの検査を行います。大学病院では目以外の疾患を持っている方や、事故による外傷があり緊急度の高い方などを検査することもあるため、患者さまの重症度によって仕事内容が異なる可能性があります。入院患者がいることも特徴ですが、視能訓練士が夜勤することはほとんどありません。
大学病院の検査は完全予約制のため、検査自体はじっくり対応できます。ただし、勉強会の参加や論文の執筆なども並行して行うため、昼休み中や検査時間終了後などの時間を使う必要があります。休憩やプライベートな時間をゆっくりとれず、多忙なスケジュールを送る傾向にあります。
視能訓練士に求められる適正は?
視能訓練士の仕事内容や病院による特性の違いなどを紹介しましたが、視能訓練士になるために求められる適性を備えているかも大切です。ここでは視能訓練士に必要な「正確性と几帳面さ」、「根気強く続ける力」、「コミュニケーション能力」について解説します。
●正確性と几帳面さ
視能訓練士は、すべての検査に正確性が求められます。検査結果をもとに眼科医が診断し、治療方法を決めるためです。検査の結果に誤りがあれば診断や治療方法も異なり、適切に改善や治癒ができません。視能訓練士が行う検査は、それほど重要な役割を持っています。
1日に何十人もの眼科検査をこなす必要があり、検査の種類もたくさんあります。正確な検査結果を出すために面倒がらずに何事も慎重に確認する几帳面さは、視能訓練士になくてはならない適正といえます。
●根気強く続ける力
視能訓練士の仕事のひとつである視能訓練は、即効性があるものではなく時間のかかるものです。視機能が何らかの原因によって低下した方や高齢者などのリハビリ、子どもの斜視や弱視の矯正などに対し視能訓練士が改善に向けて患者さまと一緒に取り組みます。
しかし、なかなか成果が出ないこともあり、経過がよくなければ不安や残念な気持ちになるでしょう。このようなときに視能訓練士が患者さまを励まし、支えになってあげることが大切です。すぐに成果がでなくても、訓練を続けられる根気強さが求められます。
●コミュニケーション力
視能訓練士は検査や訓練を行うため、患者さまと接する機会が多い仕事です。子どもから高齢者まで幅広い年齢の方がいるため、それぞれに理解してもらえるように分かりやすく伝える必要があります。また患者さまの持つ症状や悩みなどを伺い、気持ちに寄り添う姿勢や安心感を与えることも大切です。とくに子どもに対するコミュニケーションの取り方は、質問の方法を工夫しなければならない難しさもあります。
さらに眼科医へ検査結果の報告や、看護師やその他のスタッフと連携する機会もたくさんあり、正確に伝えるコミュニケーション能力が求められます。
視能訓練士としての働きやすさ
視能訓練士は、さまざまな面から見て働きやすさのある職種です。働きやすさは多くのメリットにつながるため、将来の働き方に不安のある方は参考にしてみてください。
●自分にあった勤務先を選びやすい
視能訓練士は同じ眼科でも病院の形態によって働き方が異なるため、自分の将来像やライフスタイルなどに合わせて勤務先を選べます。大学病院や総合病院、クリニックなどの違いがあり、「専門性を高めるために研究に力を入れたい」、「コミュニケーション力を活かして幅広く患者と関われる環境で働きたい」、「ルーチンワークを効率よく工夫して進めるのが好き」など、自身の求める働き方ができる勤務先を選べるのはひとつの魅力です。
●ニーズが高く転職しやすい
視能訓練士はニーズが高いため、転職しやすい職種です。実際に視能訓練士の6割以上は転職経験があるとされており、「キャリアアップを目指したい」、「環境が合わなかった」などを理由に転職する方も多いです。
転職のしやすい職業であれば、結婚や出産、家庭環境の変化などがあっても転職や再就職に対するハードルが下がり、選択肢の自由度も上がるでしょう。
●勤務先によっては残業や夜勤がない
クリニック勤務の場合は受付終了の間際に突発的な来院があることもありますが、ほとんどのケースで残業は発生せず入院患者もいないため夜勤はありません。家庭の両立をはかりたい方やプライベートの時間を確立したい方にとって、働きやすい環境といえるでしょう。
●キャリアアップを目指せる
視能訓練士は、キャリアアップを目指せるさまざまな方法があります。眼の器官は複雑であるため、知識や技能を向上させるための勉強は欠かせませんが、その分自身の努力によってキャリアアップを目指せる職業でもあります。勉強会や学会へ参加し、検査機器の取り扱いや症例を学ぶことで視能訓練士としての知識や技能を向上できます。
また勉強して経験を積めば、高い専門性や豊富な経験数を有する証明となる「認定視能訓練士」や「専門視能訓練士」の称号が与えられ、キャリアアップしやすくなります。最新の設備がある病院や特定の症状を専門に扱う病院に転職して、新たなスキルを磨くことも可能です。
●女性が働きやすい
視能訓練士の男女比は女性がおよそ85%と割合を多く占めており、女性が働きやすい職業であることがわかります。日祝の勤務や夜勤がなく、パートなどの非正規雇用の働き方もできます。そのため子育てしながら働き続けやすいなどの理由から、女性が長く活躍できる職種といえます。
まとめ
視能訓練士は、勤務先や雇用形態などによって年収や仕事内容は異なります。ライフスタイルや求める環境に合わせて勤務先を選べ、知識や技能を身につけキャリア形成も可能な職業です。需要は高いため、就職や転職、再就職に困ることも少ないでしょう。