社会福祉士はフリーランスとして働けるのか?独立方法を詳しく解説
2023年07月22日
社会福祉士の資格を取得することで、医療、教福、児童・家庭福祉、高齢、障がい者はじめ幅広いフィールドでソーシャルワーカーやクールソーシャルワーカー、医療ソーシャルワーカーといった役割を得て働くことが可能となります。
そんな幅広いフィールドでの活躍を可能としてくれる社会福祉士ですが、実はここに挙げた以外にも「フリーランス」として働く、という選択肢があることは意外と知られていません。
今回は、そんな社会福祉士がフリーランスとして独立するためには何が必要か、そして仕事を得ていくためにはどのような方法があるのか、といったことについて解説を行っていくことにします。
社会福祉士はフリーランスという選択肢もある
医療分野や教育分野、医療分野、児童・家庭福祉分野、高齢者分野、障がい者分野はじめとした幅広い福祉分野において大切な役割を担う社会福祉士。
社会福祉士の資格を有する人材は「ソーシャルワーカー」や「相談員」と呼ばれ、身体上もしくは精神上の障がいを持つ人、環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある人の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供することを使命としています。
そんな社会福祉士の資格を取得することで、先のような幅広いフィールドで活躍することが可能になりますが、実はこれ以外にも「フリーランス」という選択肢もあります。
終身雇用制度のあり方が変わり、「自分の力で人生を生き抜いていく」ことに対する価値観が高まるこの時代において、社会福祉士の資格を有する人材の中にもフリーランスという働き方を選択する人がいます。
特定の施設や組織に属さず、フリーランスとしてソーシャルワークを行っていく人は「独立型社会福祉士」と呼ばれ、福祉サービスや支援についての相談に応じるとともに、地域の福祉力を高めるための育成・支援や新たなサービスの開発など「コミュニティソーシャルワーカー」としての役割が期待されています。
しかしながら、フリーランスは特定の組織や機関に属さない雇用形態ですので、「フリーランスとして働くことができる」といっても具体的な仕事内容もわからないければ、フリーランスになるにはどうすればいのかわからない方が大半でしょう。
フリーランスとしての仕事とは?
では、具体的に「社会福祉士がフリーランスとして仕事をする」とはどういうことなのでしょうか。
社会福祉士がフリーランスとして仕事を得ていくには、大きく分けて以下の2つの方法があります。
■「業務請負」で仕事を得る
「業務請負」とは、フリーランスとして医療や教育、介護福祉をはじめととした福祉分野の施設に入り、そこで社会福祉士の資格が必要な「医療ソーシャルワーカー」「スクールソーシャルワーカー」「生活指導員」「生活相談員」といった業務を請け負うかたちで仕事をしていく形態です。この場合は学校や法人、公的機関、行政、個人などと個別に契約を結ぶ必要があります。
■「個人事業主」として仕事を得る
施設や組織に属することなく、自分で福祉に関連した事務所などを開業して社会福祉士としての仕事を得ていくのが「個人事業主」です。
具体的には社会福祉士事務所を開業の上、福祉に関わる相談や、「成年後見人」(※1)として業務を受託するなどして仕事を得ていくのが一般的です。
社会福祉士の資格を活かして成年後見人として業務を受託する場合は、公益社団法人「日本社会福祉会」の権利擁護センターである「ぱあとなあ」への登録が必要となります。(※2)
■それ以外の方法で仕事を得る
社会福祉士として一定レベルの実務経験を積んだ後、その知識を活かして福祉系のライターや監修担当として収入を得る、という方法もあります。
この場合は、クラウドソーシング系のサイトを通じて社会福祉士にまつわる執筆案件や監修案件を受注することが中心となります。
※1)「成年後見人」とは
「成年後見人」とは、認知症、 知的障害、精神障害などの理由で判断能力が衰えてしまった人の財産の保護を目的とした制度です。
たとえば認知症などによって正常な判断を行えないような人が「振り込め詐欺」や悪質な訪問販売に騙されてしまうことがニュースなどで報じられていますが、成年後見人制度を利用することで、こうしたケースでも被害の憂き目に遭わずに済むようになります。
この成年後見人には、「法定後見人」と「任意後見人」の2つがあります。
「法定後見人」は本人の判断能力が低下してから親族が家庭裁判所に申し立てを行い、判断力が低下した人の法的権利を守る制度です。
一方、「任意後見人」は判断力が十分あるうちに後見契約を結ぶ制度であり、本人の意思によって事前に後見人を指名することで成立します。この場合、親族以外にも社会福祉士を含めた第3者を指名することもできます。
※2)公益社団法人 日本社会福祉会 権利擁護センター「ぱあとなあ」
社会福祉士がフリーランスとして独立するには?
次に社会福祉士の資格を有して、医療・社会福祉系施設などに所属して働いていた人がフリーランスとして独立するための具体的な方法について解説を行っていくことにします。
先ほど、社会福祉士がフリーランスとして仕事をしていくにあたっては、「業務請負」と「個人事業主」という2つの方法があると説明しましたが、いずれの場合も一定期間以上の実務経験は必要だと考えた方がいいでしょう。
なぜならばフリーランスとして多岐にわたるニーズに対応していくには、社会福祉全般の知識はもちろん、一般的な医学、心理学、法学など幅広い知識や経験が必要であり、それがフリーランスとしての信頼にもつながっていくためです。社会福祉士としてのキャリアや実績がほとんどない状態でフリーランスを名乗ったとしても、いきなり仕事を得るのは難しいでしょう。
よって、まずは教育機関、児童福祉施設、高齢者介護施設、障がい者支援施設、地方自治体の福祉事務所、地域包括支援センター、病院などの医療機関をはじめとした施設で社会福祉士業務に携わり、そこで一定レベル以上の経験を積むことからスタートすべきでしょう。
社会福祉士事務所を開業するには?
その上でフリーランスの社会福祉士として独立を目指すのならば、前述の「業務請負」というかたちで、自分で築いた人脈や信頼をベースにそれまで雇用関係のあった職場からソーシャルワーカーとしての業務を請け負う方法や、求人サイトなどを通じて受託形態の社会福祉士の求人に応募して仕事を得る、などの方法があります。
「個人事業主」の場合は先に述べた「任意後見人」の受託に加え、「独立型社会福祉士」として相談業務などを得ていくことができます。
この「独立型社会福祉士」とは、施設などに所属することなく独立開業して働く社会福祉士のことを意味します。この場合は利用者と締結した契約にもとづき相談援助を行うことで報酬を得ていくのが一般的です。
「独立型社会福祉士」になるには、社会福祉士で構成される職能団体である公益社団法人 日本社会福祉会の「独立型社会福祉士名簿」への登録を行うことで独立開業への道が開けます。
そんな「独立型社会福祉士名簿」への登録にはいくつかの条件があります。
以下にその条件(※3)を記載しておきます。
1.都道府県社会福祉士会の会員である者
2.認定社会福祉士認証・認定機構により認定された「認定社会福祉士」である者
3.本会へ事業の届出をした者
4.本会独立型社会福祉士委員会主催の独立型社会福祉士に関する研修を修了した者
5.毎年の事業報告書の提出を確約した者
6.社会福祉士賠償責任保険等への加入を確約した者
7.独立型社会福祉士名簿の公開に同意した者
この独立型社会福祉士名簿に名前が記載されることで社会的信用を高めることができ、結果として個人事業主や小規模の法人であるがゆえの社会的信用の低さ、という課題をクリアすることができるのと同時に、専門的な支援を必要としている人やその親族、地域の人々、専門職、行政等が、独立型社会福祉士とコンタクトを取りやすい状況が生まれます。
その上で社会福祉士事務所を開設したり、個人事業主として案件を得ていくなどの活動へ入っていくことでフリーランスとしての実績を築いていくことができます。
※3)公益社団法人 日本社会福祉会「独立型社会福祉士名簿とは」
フリーランスになるメリット・デメリット
ここまで、フリーランスとしての仕事内容や独立する方法などについて解説を行ってきました。
では、社会福祉士がフリーランスとなるメリットおよびデメリットはどこにあるのでしょうか。
■メリット
1)仕事の自由度が上がる
特定の組織に属しての仕事ではなく、自己裁量の大きなフリーランスとしての仕事なので、労働時間や仕事のスケジュールなどにおける自由度が上がります。
組織に属しての仕事の場合、どうしても職場のメンバーのスケジュールやフォロー、上司の指示など、自分以外の要因による負荷が発生しがちですが、フリーランスではそうした制約がなくなり、相談者や利用者の方々と直接的に向き合いながら、より純粋に社会福祉士としてのやりがいを感じることができます。
2)人間関係のストレスから解放される
特定の組織に属さず、自分が自業主として業務を請け負い、自己裁量で仕事をリードしていけるので、上司や同僚とのしがらみに縛られることなく仕事と向き合うことができるようになります。人間関係によって悩んでいたり、仕事に対するモチベーションが下がっていたような方にとっては大きなメリットとなることでしょう。
3)自分の力量や余裕に応じた仕事ができる
独立型の社会福祉士では、ある程度自分本位で仕事を選ぶことができるので、自分の力量や余裕に応じた仕事の取り組み方ができるようになります。組織に属しての仕事ですと、どうしてもその施設の特性や組織構成によって仕事量や仕事内容が決まってしまいますが、独立型の社会福祉士ではそういった制約から解放されるので、人によっては大きなメリットとなることでしょう。
■デメリット
1)収入が安定しない可能性がある
施設や企業などに属する勤務型の社会福祉士の場合は、安定した仕事と給与を得ることができますが、独立型の社会福祉士の場合は自分で仕事を得る努力が必要であり、さらに自分の裁量の中で仕事をしていくので収入が不安定になりがちです。さらに事務所を開設した場合は、維持費などのコストがかかることも忘れてはなりません。しかしながら、自分の努力次第では受託件数や仕事量を増やすことも可能であり、それにつれて収入アップを目指すことも可能なため、一概に独立型の社会福祉士のデメリットだとは言い切れない部分もあります。
2)経営面も一手に担う必要がある
フリーランスは個人事業主なので、長期的視野で安定した収入を得ていくためには経営的なセンスも問われます。事務所を開設している場合は、その経営を維持していくために社会福祉士以外にも専門領域の幅を広げていくようなことも考える必要があります。
これを一例に勤務型の社会福祉士ならば、経営面のケアを深く意識する必要がありませんが、独立型の社会福祉士の場合は、常に経営面を強く意識しながら仕事に取り組む必要があります。
逆に「経営スキルを磨くことができるのは大きなチャンス」と前向きに捉えられる人によっては、デメリットではなくむしろメリットになり得るので、この点においても一概にネガティブなことだとは言い切れない部分があります。
フリーランスとしての社会福祉士の今後は?
経済の低迷や高齢化社会の加速による労働人口の減少、より実力や成果を重視する評価基準の変化、さらには安定より自由を目指す働き手の価値観の変化などを一因に、日本が長らく守ってきた終身雇用制度も終わりを告げようとしています。
そんな時代の中、社会福祉士の領域においても、苦労を重ねて取得した国家資格を武器に、特定の施設や企業に属することなく、フリーランスとして収入を得ながら物心両面からの満足を追求していける道があることがお分かりいただけたかと思います。
現状での独立型社会福祉士はまだまだ少数派ですが、今後、時代が移ろい、少子高齢化社会が加速とともに社会福祉士の領域で活躍する人材の重要性が高まっていく中で、よりフリーランスとして独立しやすい状況が生まれるかもしれません。
よって、これから社会福祉士の資格取得を目指そうと思っている方は、こうした自由度の高い働き方も選択できることを心に留めておくといいでしょう。
なによりも社会福祉士は国家資格であり、時代問わず社会から求められる存在であるため、求人ニーズは非常に高く、一度取得してしまえば、たとえフリーランスで行き詰まりを感じたとしても、再就職で困ることはないでしょう。
社会福祉士の資格はそれほど価値あるものであり、これからの人生においても心強い味方となってくれるものです。そうした精神的な安心感はフリーランス挑戦へのハードルを下げることにもつながっていくでしょう。
社会福祉士以外の資格も併せて取得することの重要性
フリーランスという自由度の高い働き方を選択することを考えると、社会福祉士以外の資格も併せて取得することも視野に入れたほうがいいでしょう。
それによって対応できる案件の幅が広がり、より収入の安定化を図ることが可能となります。
では、どのような資格が社会福祉士と相性がよく相乗効果を生み出しやすいのでしょうか。
以下に社会福祉士との相性がよいと思われる資格を記載しておきます。
■キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントとは、労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うことを目的とした資格です。
たとえばこの資格を社会福祉士資格と併せて取得することで、就労継続支援の案件において「就労継続のサポートとケア」という社会福祉士の役割と、「就職サポートと経済的自立」というキャリアアドバイザーの役割を併せて担うことができるようになります。
また、一般企業の労働環境整備という案件を想定した場合、「障がい者雇用のサポートと環境づくり」という社会福祉士としての役割と、「社員のカウンセリングと環境づくり」というキャリアアドバイザーとしての役割の両方からよりよい環境整備にアプローチしていけるようになるなど、仕事の幅を大きく広げることが可能となります。
■ケアマネジャー(介護支援専門員)
ケアマネジャーは要介護・要支援認定を受けた人に対するケアマネジメントを行うことを使命とする資格です。この資格を有することで社会福祉士としての役割に加え、要介護者のケアプラン作成なども併せて手がけることができ、介護支援ニーズに対して包括的に応えていけるようになります。
■介護福祉士
高度な専門知識および技術を活かし、介護を必要とする人々の身体面・精神面のケアを行うのが介護福祉士の役割です。支援が必要な人からの相談に対応し、問題解決のための助言や指導を行う社会福祉士に対し、介護福祉士は介護を必要とする人に対して、食事や入浴、排せつなどの介護を直接的に行う点で大きく異なります。
この2つの資格を併せて有することで、介護福祉に対するニーズにより高いレベルで応えていけるようになります。
ここに挙げた以外にも「精神保健福祉士」「訪問介護員」「相談支援専門員」をはじめ、社会福祉士と相性のいい資格はいくつも存在します。より長期的視野でフリーランスとしてのキャリアを考えるのであれば、こうした資格取得も考えてみてはいかがでしょうか。
ちなみに日本医歯薬専門学校の「社会福祉士・キャリアコンサルタント養成学科」では、社会福祉士に加えてキャリアコンサルタントの資格取得を目指すためのカリキュラムが組まれているので、将来的な独立開業を目指す方はもちろん、「幅広い相談内容に対応できる人材になりたい」と考えている方にとっても有意義な学びの場となることでしょう。