キャリアコンサルタントのなり方は? 最短ルートで合格する方法
2023年09月08日
求職者のよりよいキャリア形成のサポートをミッションに、カウンセリングにもとづくアドバイスを通じて最適なキャリアプランを求職者とともに考えていくキャリアコンサルタント。
このキャリアコンサルタントには国家資格(国家資格キャリアコンサルタント)が設定されており、コロナ禍による社会構造の変化や労働環境の変化などを背景に、近年、さまざまな分野にて、この資格を有する人材への需要が急速に高まっています。
今回は、そんなキャリアコンサルタントになるにはどうすればいいのか、最短ルートで合格する方法といった話を中心に、キャリアコンサルタントという資格の詳細や仕事内容などについてもわかりやすく説明し、その魅力に迫っていくことにします。
キャリアコンサルタントとは
キャリアコンサルタントの資格について解説を行う前に、まずはキャリアコンサルタントの役割や仕事内容について解説することにします。
■キャリアコンサルタントの仕事の流れ
キャリアコンサルタントとは、求職者と向き合い、その人が持つスキルや適正といった強みを見極め、それをもとに将来に向けてのキャリアプランに関するアドバイスを行う仕事です。
そんなキャリアコンサルタント国家資格を発行する厚生労働省認定では、キャリアコンサルティングの仕事の流れを以下のように定義しています。
①自己理解
求職者の興味や適正、能力等を明確にし自己理解を促すフェーズです。
これまでの職務経験の中で培った知見やスキル、どんなことに興味があるのか、キャリアを考える上で大切にしていることなどを浮き彫りにし、求職者の自己理解を促していきます。
②仕事理解
求職者が目指したい業界・仕事について理解を深めていくフェーズです。キャリアコンサルタントは求職者が目指す業界の労働環境や働き方などに関する正しい情報の提供を行うつつ、必要とされるスキル・経験などを明確にするためのサポーㇳなども併せて行っていきます。
③啓発的試験
転職や就職にあたっての最終的な意思決定を行う前に、求職者が実際の業務を体験してみることで、自己理解や仕事理解を深めていくのがこのフェーズです。具体的には、 就職活動におけるインターンシップや就労体験、職場見学、就活・転職セミナーへの参加などがそうした実体験の機会となります。
④意思決定
これまでのプロセスを経て求職者の内に「どのような仕事をしたいのか」という気持ちが固まって行く中で、それをキャリアプランへと落とし込み、具体的な計画へとつなげていくのがこのフェーズです。
求職者の意向をしっかり汲み取り、当人の意向も踏まえた上でキャリアプランを組み立てたり、短期目標および中長期的な目標設定を行なうほか、キャリア形成に役立つ能力開発や教育訓練などに関する情報の提供なども行っていきます。
⑤計画の実施
求職者と一緒に決めたキャリアプランにもとづき、求職者が目標達成に向けた計画を実行に移していくのがこのフェーズです。
計画の実行状況を把握しつつ、能力開発など必要に応じて求職者のスキルアップサポートなども行っていきます。
⑥新たな仕事への適応
求職者が就労した環境でしっかり適応できるよう、本人の努力以外の部分でキャリアコンサルタントが状況に応じたアドバイスやサポートを行っていきます。
■求職者の自己理解を促し、キャリア実現をサポートしていく。それがキャリアコンサルタントの役割
このように、カウンセリングとそれにもとづくアドバイスを軸に、仕事に関連した情報提供や状況に応じたサポートを行ない、求職者自身が自己理解を深め、そのキャリアプラン実現をサポートしていくのがキャリアコンサルタントの仕事だと言えます。
上記の仕事の流れは、厚労省が典型例として定めたものであり、勤務する職場によっては異なるプロセスを辿って求職者への支援を行うこともあるので、一概にすべてのキャリアコンサルティングがこの流れで進むとは限りません。
しかし「自己理解」にはじまり、「仕事理解」「キャリアプランの作成」「計画の実施」基本的な流れは大きく変わることはありませんので、キャリアコンサルティングという仕事を理解するにあたっては、このプロセスのイメージで考えていただいて差し支えありません。
キャリアコンサルタントになるには
では、そんなキャリアコンサルタントになるには、なにをすればいいのでしょうか。
■もっとも確実なのは資格を取得すること
もっとも確実な方法が「キャリアコンサルタントの国家資格を取得する」ことです。
冒頭で述べたように、キャリアコンサルタントは求職者のよりよいキャリア形成をサポートしていく仕事であるとともに、職業能力開発促進法にもとづいて制定された厚生労働省認定の国家資格でもあります。
国家資格であるだけに社会的な信用や評価も高く、この「国家資格キャリアコンサルタント」を取得することで、キャリアコンサルタントへの道が一気に拓けることになります。
■国家資格キャリアコンサルタントを取得するには
この国家資格キャリアコンサルタントを取得するには、厚生労働大臣の登録認可を受けた『特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会』および『特定非営利活動法人日本キャリア開発協会』いずれかの登録試験機関が実施する試験を受ける必要があります。
そしてこのキャリアコンサルタント試験を受験するにあたっては、以下の「定められた条件」があり、それを満たしている必要があります。
◎厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した者
◎労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に関し3年以上の経験を有する者
◎技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験又は実技試験に合格した者
◎上記の項目と同等以上の能力を有する者
※厚生労働省 「キャリアコンサルタント試験の受験資格」より抜粋
■実務経験がない場合は「キャリアコンサルタント養成講習」を受講すればOK
3年以上の職業生活設計または職業能力開発に関連した実務経験を持っている人や技能検定キャリアコンサルティング職種(※1)の実技試験に合格した人は自動的に受験資格を得ることができますが、それ以外の場合は厚生労働省が認定する団体が実施する「キャリアコンサルタント養成講習」を受ける必要があります。
この養成講座はスクーリング(通学またはオンライン講習)講習約80時間と通信過程約70時間で構成されており、これを受講・修了することでキャリアコンサルタント試験を受験する資格を得ることができます。
(※1)キャリアコンサルタント国家資格の上位資格にあたる資格で、正式名称は「1級・2級キャリアコンサルティング技能士」
■養成講習修了後、国家資格キャリアコンサルタント試験へ
上記の「キャリアコンサルタント養成講習」を受講・修了することで「国家資格キャリアコンサルタント試験」を受けることができるようになります。
この「国家資格キャリアコンサルタント試験」は厚生労働大臣の登録認可を受けた登録試験機関『特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会』および『特定非営利活動法人日本キャリア開発協会』によって年3回(毎年3月、7月、11月いずれかの月に実施)実施されます。
試験は「学科試験」と「実技試験」の2つに分かれており、それぞれ別日程で実施されます。
「学科試験」は四肢択一のマークシート形式で50問出題され、100点満点(2点×50問)で70点以上の得点で合格となります。
「実技試験」は受験者がキャリアコンサルタント役となり、キャリアコンサルティングを行う『ロールプレイ形式』と、自らのキャリアコンサルティングについて試験官からの質問に答える『口頭試問』の2つからなっており、150点満点中90点以上の得点で合格となります。
■キャリアコンサルタント名簿への登録を行うことで本格的な活動へ
この「学科試験」「実技試験」の両方に合格した後、国の認可を受けたキャリアコンサルタント登録センターが管理を行う「国家資格キャリアコンサルタント名簿」への登録を行うことで、晴れて「キャリアコンサルタント」を名乗ることができるようになります。
これによって自身の名刺やプロフィール等に「キャリアコンサルタント」を表記することができるようになり、本格的にキャリアコンサルタントとしての活動が行えるようになります。
この章の締めくくりとしてキャリアコンサルタントになるための流れを整理しますと、以下のようになります。
<キャリアコンサルタントになるまでの流れ>
ステップ1:キャリアコンサルタント養成講習を受講
▼
ステップ2:国家試験の受験
▼
ステップ3:キャリアコンサルタントの登録
▼
キャリアコンサルタントとしての活動へ
※上記は「キャリアコンサルティング技能検定」を取得していない人や職業能力開発に関連した実務経験のない人を対象とした場合を想定
国家資格キャリアコンサルタント試験の合格率は?
ここで気になるのが「国家資格キャリアコンサルタント試験の合格率」でしょう。
厚生労働省公開の「キャリアコンサルタント試験結果の概要」(※2)によれば、令和5年3月に実施された「第22回キャリアコンサルタント試験」では学科試験の合格率82.2%、実技試験の合格率64.6%、学科、実技試験同時受験者の合格率は59.3%となっています。
参考までに、以下、過去6回分の試験結果を掲載します。
「第22回キャリアコンサルタント試験」(令和5年3月に実施)
●学科試験合格率:82.2%
受験者数:4,797人
合格者数:3,943人
●実技試験合格率:64.6%
受験者数:5,101人
合格者数:3,295人
●学科+実技試験同時受験者合格率:59.3%
受験者数:3,942人
合格者数:2,338人
「第21回キャリアコンサルタント試験」(令和4年11月に実施)
●学科試験合格率:61.7%
受験者数:4,278人
合格者数:2,637人
●実技試験合格率:57.7%
受験者数:4,875人
合格者数:2,978人
●学科+実技試験同時受験者合格率:46.9%
受験者数:3,697人
合格者数:1,795人
「第20回キャリアコンサルタント試験」(令和4年7月に実施)
●学科試験合格率:77.9%
受験者数:3,998人
合格者数:3,115人
●実技試験合格率:60.1%
受験者数:4,128人
合格者数:2,483人
●学科+実技試験同時受験者合格率:54.9%
受験者数:3,073人
合格者数:1,686人
「第19回キャリアコンサルタント試験」(令和4年3月に実施)
●学科試験合格率:61.6%
受験者数:4,278人
合格者数:2,637人
●実技試験合格率:61.1%
受験者数:4,875人
合格者数:2,978人
●学科+実技試験同時受験者合格率:48.6%
受験者数:3,697人
合格者数:1,795人
「第18回キャリアコンサルタント試験」(令和3年10~11月に実施)
●学科試験合格率:81.1%
受験者数:4,652人
合格者数:3,771人
●実技試験合格率:63.5%
受験者数:4,604人
合格者数:2,924人
●学科+実技試験同時受験者合格率:60.1%
受験者数:3,638人
合格者数:2,187人
「第17回キャリアコンサルタント試験」(令和3年6~7月に実施)
●学科試験合格率:56.8%
受験者数:3,758人
合格者数:2,136人
●実技試験合格率:58.1%
受験者数:3,967人
合格者数:2,303人
●学科+実技試験同時受験者合格率:43.3%
受験者数:2,910人
合格者数:1,260人
この試験結果を見ると、決して簡単ではないものの、極端に難易度の高い資格ではないことがお分かりいただけるかと思います。
確実に合格を目指すには、「キャリアコンサルタント養成講習」を通じてキャリアコンサルタントの基礎を学びつつ自主的に予習・復習を重ねていくことが重要。それによって試験験の合格率を上げていくことができるようになります。
また、後述する「専門学校で国家資格キャリアコンサルタントを目指す」という方法も、国家試験対策を前提としたカリキュラムが用意されている点で、合格率を上げる上で非常に効果的だと言えます。
キャリアコンサルタントと社会福祉士2つの資格を取得できる専門学校がある
先ほど、「キャリアコンサルタント国家試験の受験資格を得るためには、キャリアコンサルタント養成講習を受講・修了する必要がある」と書きました。
キャリアコンサルタント学科を設けるような専門学校の中には、厚生労働大臣認定の養成機関と提携の上、授業の一環としてキャリアコンサルタント養成講習を受講できる学校もあります。
■キャリアコンサルタント養成講習を受講できる専門学校
たとえば日本医歯薬専門学校の「社会福祉士・キャリアコンサルタント養成学科」(2年制)では、1年生の8~11月に提携教育機関のキャリアコンサルタント養成講習を受講するカリキュラムが用意されており、それを通じて提携教育機関のキャリアコンサルタント養成講習を受講しつつカウンセリング技術やコンサルティング演習を中心にキャリアコンサルタントの理解を深めることができるようになっています。
これによって、効率的にキャリアコンサルタントに必要な知識や技術を学び、比較的短期間でキャリアコンサルタント国家試験の受験資格を取得することが可能となっています。
同校の「社会福祉士・キャリアコンサルタント養成学科」場合は2年制なので、キャリア相談に関する実務経験がない人にとっては、「職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に関し3年以上の経験を有する者」という条件よりも短い期間で国家資格キャリアコンサルタント試験の受験資格を得ることができます。未経験の方にとっては、現状この方法が最短ルートだと言えるでしょう。
こうした専門学校を選ぶことで、キャリアコンサルタントとしての基礎知識を学びつつ、
提携教育機関のキャリアコンサルタント養成講習を通じて効率よくキャリアコンサルタント国家試験の受験資格を得ることができます。
さらに同校の「社会福祉士・キャリアコンサルタント養成学科」では、少子高齢化などの背景から需要が増加する国家資格である「社会福祉士」資格取得を目指すカリキュラムも併せて組まれており、「国家資格キャリアコンサルタント」と「社会福祉士」という、2つの人気の高い国家資格取得を同時に目指せるようになっています。
■2つの資格を取得することで多彩なキャリアプランを描ける
「国家資格キャリアコンサルタント」および「社会福祉士」は、いずれも社会ニーズの高い国家資格であるため、この2つを併せて取得することで多彩なキャリアプランを描くことができるようになります。
また、「仕事の幅を広げる」という点においてもこの2つの国家資格を併せ持つことは非常に強い武器となり、「就労継続のサポートとケア」という社会福祉士の役割と、「就職サポートと経済的自立」というキャリアアドバイザーの役割を併せて担うことができる点で仕事の幅を大きく広げていくことができるようになります。
たとえば「一般企業の労働環境整備」というミッションを想定した場合、「障がい者雇用のサポートと環境づくり」という社会福祉士としての役割と、「社員のカウンセリングと環境づくり」というキャリアコンサルタントとしての役割の両方からよりよい環境整備にアプローチしていけるようになるなど、仕事の幅を大きく広げるとともに、より高いレベルで企業に貢献できるようになります。
また、医療分野で働くことを想定した場合には、「患者さんからの治療継続や仕事復帰に関する相談対応」という社会福祉士としての役割と、「療養後の就労サポート&就労復帰支援」というキャリアコンサルタントとしての役割の両面から、具体的な職業選択や今後のキャリアを考えた支援が行えるようになります。
これらを一例に「国家資格キャリアコンサルタント」と「社会福祉士」という2つの国家資格を組み合わせることで包括的な支援が行えるようになり、それによって人材としての評価を高めながら長期的視野におよぶキャリアプランを描けるようになります。
国家資格キャリアコンサルタントを目指すのなら、こうした付加価値性の高いカリキュラムを実施する専門学校を視野に入れてみるのも一つの手です。
企業がキャリアコンサルタントを導入するメリット
次にキャリアコンサルタントという仕事の社会的価値を感じていただくため、企業側から見た場合のキャリアコンサルタントを導入するメリットについて解説を行うことにしましょう。
たとえば企業で人材が働く上では、「職場になじめない」「スキルを活かせない」「もっと違う仕事がしたい」といった従業員が感じる不満や悩みにもとづく問題が往々にして発生します。
こうした場合において、キャリアコンサルタントが従業員と会社の間に立ち、それぞれが抱く悩みを浮き彫りにした上で、それを解決へと導くアドバイスを通じて従業員が自らの課題を理解し、自発的な職業能力の向上などを促すことができるようになります。
その結果、従業員のモチベーションが向上し、業務の効率化や事業の成長といった効果を継続的に生み出せるようにようになります。
厚生労働省が発行する「『国家資格キャリアコンサルタント』になって会社を元気にしてみませんか?」というリーフレットによれば、キャリアコンサルタント導入のメリットは大きく分けて以下の3つがあるとしています。
~キャリアコンサルティングの効果・意義~
①直接的な効果
・上司・部下のコミュニケーションの促進
・社員の意識や職場の課題把握
②人事施策との相乗効果
・社員の定着促進
・社員の職業能力の向上
③広範な経営施策との相乗効果
・業績の向上
・生産性の向上
近年は、「従業員が自発的に自己啓発に取り組むこと」が企業成長に欠かせない要素として重視されるようになり、そうした促しを進めていく上でもキャリアコンサルタントは重要な役割を果たします。
また、近年は社会的な価値観の変化から、かつての家族主義的な企業風土が薄れ、個人主義的な風土の色濃い企業が増えたことで従業員同士の関係の希薄化し、それによってチームワークに影響をきたすようなケースも増えていますが、こうした課題を解決する上でも上司・部下のコミュニケーション機会を促進させていくキャリアコンサルタントの存在は大きく期待されています。
キャリアコンサルタントの社会的な価値を表すデータとして興味深いのが、独立行政法人労働政策研究・研修機構がキャリアコンサルタント導入企業を対象に実施したアンケートです(※3)。
このアンケートでは、企業がキャリアコンサルタントを導入した場合のメリットを数値化しており、それによると「収入」「仕事上の地位」「仕事内容」「職場の人間関係」「会社生活全般」「現在の生活全般」という項目において、キャリアコンサルタントなどの専門家に相談した場合の満足度が、そうでない場合の満足度を上回っており、キャリアコンサルタント導入の効果が数値として表れています。
こうした点を見ても、企業がキャリアコンサルタントを導入するメリットは大きく、今後、キャリアコンサルタントを導入する企業が増えていくことが予想されます。
(※3)厚生労働省「 国家資格キャリアコンサルタント」になって
会社を元気にしてみませんか?」
キャリアコンサルタントが働く場所
「キャリアコンサルタントはどんな場所で働くのか」というのも気になる点の一つでしょう。
国家資格キャリアコンサルタントはその名が示すように国家資格であり、その資格を有するキャリアコンサルタントは社会的な信頼やステータスが高い人材でもあるので、働く場所は多彩です。
一例を挙げれば企業(企業内キャリアコンサルタント)や需給調整機関(転職エージェンや人材派遣会社など)、ハローワーク、学校(大学や専門学校など)、フリーランスなどが活躍フィールドとして挙げられます。
それぞれの活躍フィールドにおけるキャリアコンサルタントの役割について解説していくことにしましょう。
■民間企業
企業では、職業生活の設計とそのための能力開発を社員が自発的に行うことを目的に職業能力開発促進法が改正され、2016年4月より企業がキャリアコンサルティングの機会を社員に提供することが努力義務化されるなど、近年急速にキャリアコンサルタントに対するニーズが高まっています。
そんな企業内におけるキャリアコンサルタントの業務は、面接や従業員それぞれのスキルアップおよびキャリア形成に向けた研修の検討・実施、さらにメンタルヘルス支援やダイバシティ(人材の多様化)推進に向けた環境整備、人材・人事戦略のリードはじめ多岐にわたります。
また、ある程度の規模の企業では、「キャリアカウンセリングルーム」や「キャリア相談室」といった社員がキャリアに関する相談を行う場所を設置する傾向があり、そうした場所で従業員と向き合いキャリアカウンセリングを行ってような場面もあります。
■公的就業支援機関(ハローワーク、ジョブカフェ、高齢者就職支援センターなど)
ハローワークやジョブカフェ、高齢者就職支援センターといった公的な就業支援機関もキャリアコンサルタントが求められてるフィールドの一つです。
こうした場におけるキャリアコンサルタントの役割は、求職者の職務経歴や働きたい職種、求める労働条件などを把握し、それにもとづいて最適な就労先を紹介していくことが中心となります。
また、高齢者就職支援センターの場合は高齢の相談者が中心となりますので、そうした人々のセカンドキャリアを見据えた就業相談やキャリアカウンセリング、職能開発に関連したセミナー実施などを行っていきます。
■需給調整機関(転職エージェントや人材派遣会社など)
転職エージェント会社や派遣会社などもキャリアコンサルタントが活躍する代表的なフィールドです。
こうした会社におけるキャリアコンサルタントの役割は、求職者や登録者のこれまでの経歴や取得している資格、実績などを把握の上、そのスキルと実績に合った求人企業とのマッチングを行い雇用を成立させていく一連の流れをリードしていくキャリア相談の中心役を担うことが多い傾向にあります。
■学校(大学や専門学校など)
大学や専門学校に設置されている「キャリアサポート室」や「キャリアセンター」なども、キャリアコンサルタントが活躍するフィールドの一つです。
こうした場におけるキャリアコンサルタントの役割の中で、もっとも大きなものは学生たちの就職支援にあります。
カウンセリングを通じて就活に臨む学生たちの不安や悩みに関する相談に乗ったり、就活における具体的なプロセスを説明したりするほか、効果的なエントリーシートや履歴書の書き方の指導、面接対策などに関してもアドバイスを行っていきます。
また、在学中の就業体験制度であるインターンシップ利用の促しや学生の志向や希望にもとづくインターンシップ先の紹介などもキャリアコンサルタントが行っていきます。
■フリーランス
上記のようなフィールドでキャリアコンサルタントとしての経験・実績を積んだ後、フリーランスとして独立することも可能です。
この場合は独自に企業や教育機関と契約を行ない、企業を舞台にキャリア支援を行ったり、大学・専門学校のキャリアセンターで就活支援を行うなどの働き方が一般的です。
複数の契約先でのキャリアコンサルティング業務を掛け持ちできるので、頑張れば頑張っただけ収入アップを図ることができるのがフリーランスの魅力だと言えます。
キャリアコンサルタントの将来性
キャリアコンサルタントは2016年4月から国家資格キャリアコンサルタントとして法制化された新しい職業ということで、今後、その活躍フィールドはさらに広がっていくことが予想されます。
今後、社会の高齢化がより一層進んでいく中で、企業では従業員一人ひとりの生産性や創造性を向上させていくこと競争力強化や企業の発展へとつながっていくものとしてキャリアコンサルティングの重要性が高まっています。
また、キャリアコンサルタントは法律上の守秘義務・信用失墜行為の禁止義務が課されている名称独占資格であり、国家資格キャリアコンサルタントの資格を有している人しか名乗ることができません。それだけに社会的な信用や評価も高く、この資格を得ることで将来的なセカンドキャリア形成ににおいても強力な武器となってくれることでしょう。
そういった意味でキャリアコンサルタントは、今後ますますニーズが高まっていく将来性豊かな役割であり資格だと言えます。