歯科衛生士の矯正歯科での仕事内容をご紹介!やりがいや向いているタイプとは?
歯科衛生士は歯科医師のサポートや口腔衛生管理が主な仕事ですが、一般歯科や小児歯科、審美歯科、矯正歯科などの勤務先によって仕事内容は異なります。
就職や転職を考える際に、診療科ごとの仕事内容を知りたい方もいらっしゃるでしょう。
今回は矯正を専門とする矯正歯科における歯科衛生士の仕事内容について詳しく解説します。求められるスキルややりがい、向いているタイプなどもあわせて紹介します。
目次
矯正歯科医院は難症例にも対応
一般的な歯科治療は対象外としていることが多い
歯科矯正は自費診療となるケースが多い
矯正治療のニーズが高まることが予想されている
歯科医師の治療行為のサポート
写真撮影の担当または補助
矯正ワイヤーのメンテナンス
マウスピース作成やアタッチメント装着
むし歯や歯周病の予防処置・クリーニング
歯磨きや食事指導
MFT(口腔筋機能療法)の指導
矯正治療の資料作成
患者さまとのコミュニケーション力
スムーズな治療を施すためのサポート力
矯正治療の知識・技術の向上心
パソコンスキル
歯科衛生士としての専門性を高められる
スキルアップしやすい環境が多い
患者さまとの信頼関係を築きやすい
ワークライフバランスがとりやすい
歯科矯正に興味がある人
専門性の高い知識・技術を身に付けたい人
柔軟に対応できる人
サポートが得意・役に立ちたいと考える人
矯正歯科医院の特徴とは?
矯正歯科医院とは、歯の矯正を専門に行っている歯科医院です。
歯科矯正は、ワイヤーやマウスピースなどのさまざまな矯正装置や方法を用いて、患者さまの歯並びや噛み合わせの改善を目的に行われる治療です。
●矯正歯科医院は難症例にも対象
一般的な歯科医院でも矯正治療は行っていますが、専門性の高い治療であるため歯科矯正を専門とする歯科医師がいない場合や、難しい症例の場合は対応できないケースもあります。矯正歯科医院では十分に修練を積んだ経験豊富な歯科医師が治療にあたるため、難症例や幅広い症例にも対応できます。
●一般的な歯科治療は対象外としていることが多い
むし歯や歯周病などの歯科治療は、矯正歯科では対象外としていることが多いことも特徴です。そのため、矯正治療のときにむし歯や歯周病などが見つかった場合は一般歯科で治療を受けるのが基本です。
●歯科矯正は自費診療となるケースが多い
歯科矯正は基本的に自費診療となり、保険は適用されないため治療費は高額になる傾向にあります。顎の骨などの外科手術を伴う矯正治療や、先天性の疾患による噛み合わせや歯並びの矯正など一部の治療は保険適用の対象となる場合もあります。
●歯科治療のニーズが高まることが予想されている
歯の矯正治療は幼少期から学生時代にかけての期間に受ける方が比較的多い傾向にありましたが、近年では30代以降の世代でも矯正治療を受ける方が増えているといわれています。目立たない矯正器具を選べたり歯科治療のローンを利用できたりと、以前に比べて矯正治療が受けやすくなっています。今後も、矯正歯科医院のニーズが高まっていくことが予想されます。
歯科衛生士の役割
歯科衛生士の役割は、「歯科医師のサポート業務」と「口腔衛生管理」の2つに大別できます。
「歯科医師のサポート業務」では歯の治療中に歯科医師に器具を渡し、患者さまの口の中を吸引するなどします。歯科医師を補助しながら患者さまのようすに気を配りますが、サポート業務は歯科助手も対応できます。
一方、患者さまがむし歯や歯周病にならないように口腔内をキレイに掃除し、適切な歯磨き方法を指導するといった「口腔衛生管理」は歯科衛生士にしかできないため、もっとも大切な仕事内容であるといえます。
とくに矯正歯科では口内に器具などを装着するため、器具を装着していない口内の状態よりもむし歯や歯周病にかかりやすくなります。そのため矯正歯科では患者さまの口腔衛生管理は非常に重要であり、歯科衛生士の役割は大きいといえます。
矯正歯科の歯科衛生士の仕事内容
矯正歯科で歯科衛生士はどのような業務を行うのか、大まかな仕事内容をご紹介します。
❏歯科医師の治療行為のサポート
歯科医師が行う治療のサポート業務は、歯科衛生士の役割のひとつです。
【サポート業務の一例】
- 治療器具の管理・消毒
- 治療内容をカルテに記録する
- 処置前に口内を清掃する
- 処置中に口内のバキューム操作
- 歯科医師に治療器具の受け渡し
- 詰め物や被せ物のためのセメントを練る など
これらの業務は歯科助手でも行える行為ですが、歯科衛生士が行うこともあります。矯正歯科医院では、むし歯や歯周病など基本的な歯科治療を行っていないことが多いです。しかし矯正に必要な抜歯を行うケースもあるため、歯科衛生士はサポートにあたります。
❏写真撮影の担当または補助
矯正歯科医院では、一般歯科などでは扱っていない歯科用CTなどを使った撮影業務があります。歯科用CTは撮影装置とコンピュータ処理によって3次元的に構築でき、顎の骨や歯の状態を高精度に判断できる機械です。
矯正治療では歯並びや噛み合わせ、顎の骨などを正確に診断する必要があるため、歯科衛生士は写真撮影に関する業務にも携わります。スムーズに撮影ができるように、患者さまを誘導したり撮影を担当したりします。
❏矯正ワイヤーのメンテナンス
矯正治療は、定期的に矯正器具をメンテナンスする必要があります。矯正治療の代表的な矯正器具にブラケットがあります。ブラケットを固定するワイヤーの結紮(けっさつ)や、ワイヤーやゴムを交換する作業は歯科衛生士のメンテナンス業務の一つです。とくに結紮は矯正治療に限り必要な作業であるため、歯科衛生士が活躍する業務となるでしょう。
❏マウスピース作成やアタッチメント装着
歯に透明なマウスピースを装着する矯正治療では、マウスピースの作成や歯にフィットしているかをチェックする作業は歯科衛生士が担います。また、マウスピース矯正治療のひとつに、マウスピースを固定できるように歯にアタッチメントを取り付ける方法があります。アタッチメントを交換する作業は、歯科衛生士が担当することが多いです。
❏むし歯や歯周病の予防処置・クリーニング
むし歯や歯周病の原因となる歯石やプラークを除去する歯のクリーニングは、歯科衛生士の大切な業務のひとつです。また予防措置として、歯の表面にフッ化物ジェルを塗り歯質の強化を図る「フッ素塗布」や、歯の噛み合わせ部分の複雑な溝を滑らかにする「シーラント」などを行うこともあります。
❏歯磨きや食事指導
矯正器具を装着している状態では、普段の歯磨きだけではケアしきれずむし歯や歯周病などのリスクが高まります。そのため、歯科衛生士は患者さまの口内の状態に合わせて適切なブラッシングの方法を指導します。矯正期間中は、歯を動かすと痛みが出たり食べ物が器具に詰まったりして、食事がしにくいと感じる方もいます。調理方法や食べ方についてのアドバイスを行い、矯正中でも食事を楽しめるようにすることも歯科衛生士の大切な業務です。
❏MFT(口腔筋機能療法)の指導
MFTは歯並びや噛み合わせを改善するため、悪影響を与える口呼吸などのクセを直し、口周りの筋肉を鍛えながら正常な動きへと改善する訓練法です。歯科矯正の治療と同時に行うケースが多く、MFTの指導も歯科衛生士の仕事のひとつです。
❏矯正治療の資料作成
矯正治療の内容を資料にまとめる業務は、歯科衛生士が担当することが多いです。矯正治療は長期間に及ぶため、治療中の歯の状態を観察して現在の状態や治療計画について患者さまと情報を共有します。
歯科衛生士が矯正歯科から求められるスキル
歯科衛生士の国家資格があれば矯正歯科医院で働くことは可能ですが、矯正歯科ならではのスキルも必要になります。歯科衛生士が矯正歯科に求められるスキルは、主に以下の4つがあります。
●患者さまとのコミュニケーション力
歯並びや噛み合わせ、生活習慣などは患者さまそれぞれで異なります。そのため悩みの数は患者さまの人数分あり、一人ひとりに寄り添ったコミュニケーション力が必要とされます。患者さまが理解しやすいようわかりやすい説明力や、心の声を汲み取る力などが求められます。
矯正治療は数か月以上に渡って継続して治療を行うため、患者さまに安心して治療を受けてもらえるような心がけも大切です。
●スムーズな治療を施すためのサポート力
矯正治療に必要な事前準備や、歯科医師の指示に従った適切な処置など、スムーズな治療のためのサポート力は必要とされるスキルです。そのため、患者さまの治療内容を把握し、経過観察をしっかり行うことが大切です。歯科衛生士は歯科医師と患者の間に立ち、患者さまが抱える不安や悩みなどを伺い、歯科医師に正確に共有するといったサポート力があるとよいでしょう。
●矯正治療の知識・技術の向上心
歯科衛生士は手先の器用さが必要と思われるかもしれませんが、それ以上に知識や技術を習得しようとする向上心が大切です。矯正治療は専門的な分野であるため、歯科衛生士にも専門的な知識や技術が必要とされます。
歯科医院の募集要項によっては未経験でも可としているケースもありますが、研修や実践を交えて技術や知識を学んでいく必要があります。研修や実践では受け身で教えてもらうのを待つのではなく、積極的に自ら学ぶ姿勢と向上心が大切です。
●パソコンスキル
矯正医院で働く場合、ほかの歯科医院業務に比べるとパソコンを扱う操作が比較的多くなります。必須のスキルではありませんが、パソコン操作に慣れていると業務がスムーズに進められます。患者さまの状態を記録し今後の治療プランなどの資料作成や、治療に必要な写真の分析など矯正歯科ならではの業務があります。
矯正歯科医院で働く歯科衛生士のやりがい
矯正歯科で働く歯科衛生士は、どのようなやりがいを感じているのでしょうか。
●歯科衛生士としての専門性を高められる
矯正治療を専門としていることから、さまざまな症例を豊富に経験でき専門性を高められます。矯正装置の取り扱い技術を磨いたりMFTの経験を積んだりと、一般歯科医院では習得できない技術を身につけられるでしょう。
●スキルアップしやすい環境が多い
矯正歯科医院はセミナーや外部の勉強会の機会が多いため、本人の意欲次第でスキルアップのチャンスや可能性がたくさんあります。矯正歯科の技術や知識、経験は矯正歯科以外の診療科でも活かせるスキルであり、自身の強みとなるでしょう。
●患者さまとの信頼関係を築きやすい
矯正治療は数年などの期間をかけて治療を行うため、患者さまとの付き合いも長くなります。歯並びや噛み合わせが改善される変化を見届けて、悩みが解消され患者が喜んでいるようすを間近で見られたときはやりがいを感じる瞬間となるでしょう。
●ワークライフバランスがとりやすい
矯正治療は基本的に予約制であり、突発的な口内の痛みや器具のトラブルなどのケースも少ないため、診察時間の通りに業務を終えられます。そのため歯科衛生士の残業時間は比較的少なめで、プライベートの時間も確保しやすい点が魅力のひとつです。ワークライフバランスのとりやすさは、仕事のやりがいにつながるでしょう。
矯正歯科医院の歯科衛生士に向いているタイプ
どのようなタイプの歯科衛生士が、矯正歯科医院に向いているのでしょうか。
●歯科矯正に興味がある人
矯正歯科医院は歯科矯正の診療がメインであるため、歯科矯正に興味がある人や関心が高い人が向いているといえます。本格的に歯科矯正の分野で働いてみたい、技術を習得したいという人はチャレンジするとよいでしょう。
●専門性の高い知識・技術を身に付けたい人
矯正歯科医院は、セミナーや外部の勉強へ参加する機会が一般歯科医院に比べて多い傾向にあります。保険診療が中心の一般歯科よりも専門性が高いため、勉強を重ねて知識と技術を習得していく必要があります。
歯科衛生士としてスキルアップを目ざす人であれば、矯正歯科医院は最適な環境といえるでしょう。矯正歯科の専門的な知識は、将来的に幅広く活用できる可能性も大きくなります。
●柔軟に対応できる人
歯科衛生士の基本的な業務である歯科医師のサポートや口腔内のケア、予防法の指導などに加え、MFTの指導や治療計画の作成など幅広い業務スキルが求められます。さらに患者の状態や要望によって治療計画が決まるため、一人ひとり治療や矯正方法は異なります。さまざまなケースに柔軟に対応できる人は歯科衛生士に向いています。
●サポートが得意・役に立ちたいと考える人
歯科衛生士は、歯科医師の業務や患者さまの歯科治療をサポートする役割があります。人の役に立つのが好きな人や、サポートが得意な人であれば向いています。患者さまと長い期間向き合いながら食生活や口腔状態を把握しアドバイスや指導を行っていくため、患者さま一人ひとりのことを考えて寄り添える人にとっては、充実度が高い仕事といえるでしょう。
まとめ
矯正歯科ならではの歯科衛生士の仕事内容や仕事のやりがい、向いている人の特徴などを紹介しました。矯正歯科は子どもだけではなく、大人になってから矯正治療する方も増えています。歯科衛生士が矯正歯科の分野で活躍できる場は広がり、今後もさらに重宝される存在となるでしょう。